こんにちは。講師の富岡です。
今回は、本を読む意義について考えていこうと思います。
おそらく皆さんの中にも
本なんて読む読まない自由じゃん!
と思われている方もいらっしゃるかと思います。
私自身もそうでした。ずっとそうやって生きてきました。
私が本を読み始めたのは大学生になってからでした。
本を読み始めて心から思ったことは、
「なんでもっと早くから本を読まなかったのだろう……。」
という後悔でした。
本の威力を痛感したんですね。
今回は、本を読むことにはどんな意義があるのかを知りたい方向けの記事となります。
これは意外かもしれませんが、受験生にも大変役立つものだと思います。
本を読む意義5選
まずは結論から。本を読む意義は以下の通りです。
- 頭が良くなる。
- 語彙の養成につながる。
- 健康に良い。
- 教養が身につく。
- 他者を理解できるようになる。
もちろん、これら意外にもメリットはたくさんあります。
今回は、私が特に大きく感じている意義について5つ挙げさせていただきます。
これらについて少し深掘りしていきましょう。
頭が良くなる。
まず、本を読むと頭が良くなります。
よくある議論が、
「頭が良いから本を読むのか」「本を読むから頭が良いのか」
みたいなものです。
結論を申しあげますと、これは「本を読むから頭が良い」です。
また、本を読んでその威力に気付いた者からどんどん本を読んでいきます。すると、「頭が良いから本を読んでいる」という現象が起きるのです。
つまり、はじめは「本を読む」ことから出発しているんですね。
さて、一口に「頭が良い」といっても、その定義が曖昧だといけませんね。
ここでは「頭が良い」とは「頭の回転が速い」と定義しましょう。
もちろん、これには遺伝的要因もある程度絡んでくることは疑いようのない事実です。しかし、実は本を読むことで磨けるものでもあるんですね。
では、なぜ本を読むと頭の回転が速くなるのでしょうか。
私が思う最も簡潔な答えが、「頭の良い人の考え方を追体験できるから」です。
優秀な書き手が一般向けに解説した新書や、知識人が人生の課題を物語として表した小説などにはみな、「頭の良い人の考え方」が記されています。
普段周囲に優秀な人がいなくても、本を開けば頭の良い人の考え方に触れることができるのです。
これを積み重ねていくうちに、物事の考え方に深みが出てきます。
同時に、知識もますます増えていきます。
そうすることで、頭の回転がどんどん速くなっていくのです。
頭の回転が速くなれば、本の世界から飛び出して、勉強、対人関係、社会関係、自己成長などにもそれは応用できるわけです。
自分がどうすれば良いかきちんと考えられるようになっていますからね。
もちろん、ずっと本の世界だけに浸っていると、そういう応用はできません。行動に移してみることをオススメします。
語彙の養成につながる。
これは分かりやすいかもしれません。
本を読んでいる人は、読んでいない人よりも様々な語彙に触れるため、当たり前かもしれません。
ここでは、語彙を増やすことについて焦点を当てていこうと思います。
皆さんが今見ている世界は何によって創られているのでしょうか?
様々な答えが考えられると思いますが、その一つの答えが「語彙(言語)」です。
え、言語が世界を創ってるの?!
そうです。
言語には「言語の分節化作用」というものがあります。(現代文でも出てきます。)
これは、混沌としてぐちゃぐちゃしたものを秩序立てて整理する役割です。
例えば、子どもの頃に見えていた風景と、現在見えている風景は違いますよね。
それは子どもの頃よりも現在の方が様々な語彙を習得したからです。
小さい頃は「机」がどういうもので、「イス」がどういうものかを知りません。
したがって、区別ができない(混沌)のですね。
そこに「机とはこういうもので……」「イスとはこういうもので……」と語彙を習得することにより、整然とそれらを区別することができるようになります。
言語にはこのように世界を切り分ける「分節化作用」があるわけです。
(※ソシュールの言語学をどこまで支持するか、カントのアプリオリのカテゴリー論をどこまで支持するかによって議論は分かれますが、ここではその議論は置いておきます。)
つまり、語彙が貧困だと見えている世界が狭いということになります。
見えている世界が狭いと、考えることができる範囲も限られてしまいます。
これは先の「頭が良くなる。」のところでもお話ししたこととつながります。
頭の良い人の考え方を追体験することに加えて、豊富な語彙を持つということ。これが頭の良さにつながるのです。
健康に良い。
本を読むことは健康に良いといわれています。
イェール大学の研究によると、
1日30分以上の読書で死亡リスクが約20%減少する。
と言われています。意外な結果ですよね。
私も読書を取り入れていますが、非常に良いと思っています。
朝読書で自律神経を整えることも可能です。
知識も増えて、健康にも良い読書は必ず生活に取り入れたいですよね。
私の場合読書のタイミングは朝ですが、夜読書も良いと思います。
そちらの方が気分的に合っているなと思う方は夜読書をしてみると良いかもしれませんね。
その場合、熱中しすぎて睡眠時間を削ることがないように注意してください。
教養が身につく。
本を読むと教養が身につきます。
本の書き手は様々な勉強をしていますから、その1行1行に教養がにじみ出ています。
そうしたものをたどっていけば、何を知っておいたほうが良いのか、今何が必要な知識とされているのかがわかります。
現代文なんかを教えていると、しばしば教養のなさから失点する生徒を見かけます。
巷では、「現代文に知識など不要」とありますが、私はそうは考えておりません。
最低限おさえておくべき共通ルール(教養)は必要になります。
そうでないと文意がとれないこともよくありますから。
しかし、そうした教養が身についていない受験生が多いんですね。
知識はきちんと摂取していってほしいと思います。
教養を身につければ、高度な会話にも参加できるようになってきます。
社会に出ればそういう品格も問われる場面があるでしょう。
もちろんそれだけでなく、教養を身につけるということは、物事を考えるための土台を手に入れることと同じです。
先人たちの苦心の結晶が教養です。それはありがたく頂戴するべきでしょう。
他者を理解できるようになる。
これが最大のメリットだと私は考えています。
皆さんの中には「他者」はいますか。
「他者」とは、自分には絶対に分からない側面をもった存在全般のことを指します。
例えば、AくんとBさんは他者の関係です。
なぜならAくんとBさんは生まれも育ちも違うし、趣味も違う、ほとんど何もかもが違う存在です。
お互い絶対に理解できない側面をもっているわけです。
ここで注意したいのが「他人」とは少し違うということです。
「他人」はせいぜい「違う人」くらいのイメージですが、「他者」は「自分には分からない側面をもった存在」を表すからです。
はじめに皆さんの中に「他者」はいるかと聞きました。
それは、「自分とはまったく違う存在を、そっくりそのまま、まるごと愛せるか」ということです。
ここで少し、チェックしてみましょう。
次のタイプの人は「他者」がいないかもしれません。
- 相手を自分の思い通りに操ろうとする。
- 思い込みが激しい。
- 相手の行動にケチをつける。
- 自己愛が(悪い意味で)強い。(=ナルシシズム)
これらに共通している点は、「他人を自分の都合の良い人形にこしらえる」点にあります。
その場合、「他者」は消え、自分の思い通りになる「他我」だけが残ります。
「他我」とは、相手の中に自分を投影してしまうことです。
「きっとあの人は自分と同じように考えてくれるはずだ」などという「決めつけ」がそれです。
全部頭の中でこしらえてしまう。私はそういう人には皮肉をこめて「相手を想像の中で創造する人」と呼んでいます。
例えば、亭主関白や、恋人を束縛・支配したりする人などは典型例ですね。
そういう人の中には「他者」がいないのです。「違い」を愛せないのですね。
さて、前置きが長くなってしまいました。読書のメリットに戻りましょう。
そうです、まさしく本を読むと「他者」が生まれるのです。
自分とは遠くかけ離れたタイプの登場人物だったり、自分とは反対の思想をもった思想家だったり、そうした「他者」に出会うことができるのです。
この出会いを繰り返すことに、自分の中に「他者」が生まれてきます。
すると、日常生活の中でも相手に対して「他者」を認め、寛容になれるのです。
なぜなら、相手は「私ではない」存在なのですから、こちらが決めつけて支配するのなんて御法度も良いところだと気付くようになるからです。
相手は「他者」なのです。不可解な点があって当然なのです。
そんな「他者」をそっくりそのまま、他者ごと愛することができるようになります。
本は世界を広げ、「私」を広げてくれる。
今回は本を読むことの意義について述べてきました。
読書には実際に、もっとたくさんのメリットがあるはずです。
受験生の場合、本を読む時間がないと言いたくなるでしょうが、むしろそれが怖いのです。
少しの時間でも良いので本を読みましょう。
現代文の勉強、と考えてやってみてもいいでしょう。
あえて誇張して言っておきます。
勉強するくらいなら本を読みなさい。
受験指導の世界に身を置いているからこそ、これくらいのことは言っておきたいと思います。
それくらい絶大な効果を発揮してくれるのが本なのです。
視野狭窄の状態で勉強されるよりも、視野を広げた状態で勉強してほしいものです。
本は世界を広げ、「私」の可能生も広げてくれるのです。
ぜひ、生活の中に読書を取り入れてみてください。
ここまでご覧いただきまして、ありがとうございました。