【2025年共通テスト】2022年新課程高校数学の変更点・方針の徹底解説!


富岡
富岡

こんにちは。学習PROJECT代表の富岡です。
今回は、大きく変更のあった2022年新課程の高校数学について解説していきます。

2022年から新課程に移行しました。
新課程は、2022年に入学された高校1年生から対象になります。
この課程は、3年後の2025年共通テストにも関わってくるものです。


この記事は以下の方に有益な情報となります。

・2022年入学の高校1年生とその保護者
・数学を先取りしている生徒とその保護者
・塾、予備校で数学を指導する先生
・2025年共通テストにおける数学の変更点を知りたい方



それでは、新課程高校数学についてみていきたいと思います。
最後までお付き合いいただけると幸いです。

単元の変更点

まずは、大まかに変更点を見ていきましょう。
下表のラインマーカーは以下を意味します。

赤マーカー:新しく導入され、かつ必須単元
青マーカー:科目の移動があった単元
黄マーカー:新しく導入されたが、学校や入試で扱うかはグレーな単元

科目現行課程新課程
数学Ⅰ①数と式
②二次関数
③図形と計量
④データの分析
①数と式
②二次関数
③図形と計量
④データの分析
数学Ⅱ①いろいろな式
②図形と方程式
③三角関数
④指数関数・対数関数
⑤微分・積分の考え
①いろいろな式
②図形と方程式
③三角関数
④指数関数・対数関数
⑤微分・積分の考え
数学Ⅲ平面上の曲線と複素数平面
②極限
③微分法
④積分法
①極限
②微分法
③積分法
数学A①場合の数と確率
②図形の性質
③整数の性質
①場合の数と確率
②図形の性質
数学と人間の活動
数学B①数列
ベクトル
③確率分布と統計的な推測
①数列
統計的な推測
数学と社会生活
数学C×ベクトル
平面上の曲線と複素数平面
数学的な表現の工夫
(※【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説を元に作成 URL: https://www.mext.go.jp/content/1407073_05_1_2.pdf 2022年5月閲覧)

上の表に大まかにまとめてみました。
さらに以下のようにまとめてみていきましょう。

①数学Cの復活
②数学Bに「統計的な推測」の導入
③「数学と人間の活動」「数学と社会生活」「数学的な表現の工夫」の導入


①数学Cの復活

新課程では、現行課程ではなかった数学Cが設置されます。
数学Cは現行課程の前身にあたる「旧課程」にはあったので、ここでは”復活”としています。
しかし、その中身は異なります。


今回、数学Cは「ベクトル」「平面上の曲線と複素数平面」「数学的な表現の工夫」で構成されています。 
ベクトルが数学Cに移ったのは少し驚きました。
また、私の代では数学Cには「行列」がメイン単元として扱われていましたが、今回「行列」は「数学的な表現の工夫」に盛り込まれることになります。
(※「数学的な表現」については後ほど触れます。)


さて、この数学Cですが、なんと国公立文系受験生にも必要な科目になります!
これは2025年共通テストの出題科目を見れば分かります。
こちらに関しても後ほど詳しくみていきますが、今まで以上に学習が大変になりそうです。

②数学Bに「統計的な推測」の導入

今回最も大きな変更点が、「統計的な推測」の数学Bへの導入です。
こちらは、授業ではもちろん、入試でもほぼ必修化されます。


現行課程の「確率分布と統計的な推測」とあまり大きな変更点はないのですが、そもそも現行課程では「確率分布と統計的な推測」は多くの人が学習していません!
基本的に現行課程の数学Bは「ベクトル」と「数列」という印象なはずです。


やはり、昨今の情勢を鑑みて「統計」の重要性が際立っているからでしょう。
現代は、AIやIoTの普及にみられる「Society5.0」という新時代に突入するまさに過渡期なのです。
実際に文科省の「改訂の経緯」においても以下のように書かれています。

進化した人工知能(AI)が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されるIoTが広がったりするなど、Society5.0とも呼ばれる新たな時代の到来が、社会や生活を大きく変えていくとの予測もなされている。また、情報化やグローバル化が進展する社会においては、多様な事象が複雑さを増し、変化の先行きを見通すことが一層難しくなってきている。

【数学編 理数編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説 URL:https://www.mext.go.jp/content/1407073_05_1_2.pdf

こうした複雑な社会を生きるためには、「統計」の知識は必須アイテムなのです。
そのため、今までの課程ではほとんど扱われることのなかった「統計」が、授業でも入試でも扱われるようになってきます。
また、「統計」の分野は同じく必修化される「情報Ⅰ」とも関連が深いことも付け加えておきましょう。


結果として数学Bは、新課程では「数列」「統計的な推測」「数学と社会生活」で構成されることとなります。

③「数学と人間の活動」「数学と社会生活」「数学的な表現の工夫」の導入

数学Aに「数学と人間生活」、数学Bに「数学と社会生活」、数学Cに「数学的な表現の工夫」が導入されます。
先に述べると、これらの単元は扱われるかが非常に怪しい分野になります。
教科書には載ってはいるけれど・・・くらいにはなるでしょうか。


なぜ、扱われないか。主な理由は2つ考えられます。
一つは、2025年共通テストでは、これらの単元は出題されない予定だからです。
もう一つは、学校の授業時間の中ですべての単元を扱うことが難しいからです。
そのため、中心の単元からははずれることになります。


ただし、注意したい点があります。それは、大学独自の一般試験や二次試験にはこれらの分野が出題される可能性がある、という点です。
これはきちんと志望大学の要項をチェックしておく必要があります。


やや注意を要するのが数学A「数学と人間の活動」です。
こちらには、現行課程で扱われている「整数の性質」が含まれることになります。

新課程では「整数」の単元は扱われなくなる!

という人もいます。
間違ってはいないのですが、これを誤解しないようにしてほしいのです。


何が言いたいかというと、「整数」は一般試験や二次試験では出題されます
特に難関大はどの時代でも「整数」の出題がみられます。
いつの時代でも、この分野は「教科書だけでは足りない」ナンバーワンの単元なのです。


実は現行課程の前身である旧課程では、あまり「整数」の単元は扱われませんでした。
しかし、旧課程履修者だった私の代でも「整数」の分野は普通に問われていました


どちらにせよ、「整数」の分野は自分で学習する必要が出てくると思います。

学習内容の変更点

ここではもう少し細かく変更点をみていきたいと思います。
先ほどは単元そのものの変更点をみてきましたが、ここでは単元の”中身”である学習内容の変更点に焦点を当てたいと思います。


主な変更点は以下です。

①数学Ⅰ「データの分析」に”仮説検定”の導入
②数学A「場合の数と確率」に”期待値”の導入
③数学B「統計的な推測」の導入



「統計的な推測」は新しく導入された単元なので、基本的には数学Ⅰ・Aの中身に変更が出てくるわけですね。

①数学Ⅰ「データの分析」に”仮説検定”の導入

現行課程の「データの分析」は引き続き残ります。
しかし、学習事項が一つ増えます。それが「仮説検定」です。


仮説検定とは、調べたいことに関する推測が正しいかどうか判断するための一つの考え方のことです。
(記事の本題から外れてしまうので、ここでは解説はしません。)


この仮説検定をコインなどを使いながら考えていきます。
数学Ⅰでは、仮説検定の”考え方”を学ぶことになります。


実は、仮説検定には”公式”も存在していて、そちらは数学Bで詳しく学ぶことになります。
つまり、「仮説検定」は数学Ⅰ、Bで2回学習することになるのですね。


やはり「統計」への入り口と言いますか、その重要性が今回の改訂に表れていますね。

②数学A「場合の数と確率」に”期待値”の導入

「場合の数と確率」には「期待値」が導入されます。
私にとっては”復活”した、という印象です。
旧課程では、「期待値」がこの単元の中にありました(※「条件付き確率」はありませんでした)。


実はこの「期待値」、現行課程では数学B「確率分布と統計的な推測」に含まれていました。
ただ、ほとんどの人がこの単元を学習しないので目新しく映るかもしれません。


さて、今回この単元には「期待値」が追加されただけで、「条件付き確率」は残り続けます
先の「仮説検定」と併せても、学習事項が増えることになります。


ちなみに期待値を用いると、あるゲームや賭け事に参加する方が得なのか損なのかを判断したりできます。

③数学B「統計的な推測」の導入

「統計的な推測」は以下の事項を学習します。

・確率分布
・正規分布
・統計的な推測



「確率分布」では、確率変数の平均や分散、二項分布などを扱います。
「正規分布」では、連続型確率変数などを扱います。
「統計的な推測」では、母集団と標本や、区間推定・仮説検定などを扱います。
(記事の本題から外れてしまうので、ここでは細かい解説はしません。)


新しく学習する事項がやはり増えるわけです。


「仮説検定」「期待値」「統計的な推測」をすべて入れてくるあたり、相当「統計」へのこだわりが大きいものと思われます。

新課程移行により懸念される問題

新課程の移行では以下のような懸念があります。

・生徒の学習負担が大きくなるのではないか…
・数学指導者が新しい事項をしっかり指導できるか…
・国公立大志望者が減るのではないか…


生徒の学習負担が大きくなるのではないか…

一番の懸念事項が学習負担の大きさです。
実際に数学では、現行課程よりも学習事項が一単元以上多くなっています


先にみたとおり、数学Bに「統計的な推測」という単元がまるっと一単元追加されます。
加えて、「データの分析」に”仮説検定”が、「場合の数と確率」に”期待値”がそれぞれ追加されるわけです。


ただでさえ現行課程でも授業を終えるのがやっとな学校もあるくらいです。
新課程では、かなり厳しいカリキュラムが組まれるかもしれません。


またこれは補足ですが、学習量が多くなることでいよいよ中高一貫校との差が広がりそうです。
学習以外の、環境や経済的な格差がますます試験での成績に反映されるようになるかもしれません。

数学指導者が新しい事項をしっかり指導できるか…

こちらも懸念事項です。

数学を教える立場なんだから出来て当然でしょ?

こんな声も聞こえてきそうですが、事はそう単純な話ではありません。


たしかに、数学を専門にしている先生であれば、当然出来てほしいところではあります。
しかし、一口に「先生」と言っても、様々な先生がいるものです。


例えば、個別指導の講師。彼らは複数教科を指導することが多いです。
そのため、数学を教えてはいるが、数学自体を専門としている先生は少ないでしょう。


また、学生講師。集団授業でも個別指導でも家庭教師でも、どの形態でも当てはまります。
大学の勉強やサークル活動をこなしながら、新しい課程を学習することはなかなか大変です。
また、新課程移行の情報を入手していない方もいらっしゃるかもしれません。


私は集団塾にも個別指導塾にも所属した経験がありますし、家庭教師の歴もあります。
学校や集団の「数学専科」のプロであれば通用する話が、個別指導や家庭教師、学生講師では通用しないことを身をもって知っています。


誤解しないでいただきたいのが、彼らが専科の先生に劣っているということではありません
教育の需要のあり方は様々です。専科でなくても、きちんと需要に応えていく優秀な先生は年齢問わずいらっしゃいます
教科の能力も大事ですが、それ以上にきちんと需要に応えていく姿勢の方が大切です。


そうした指導者が、しっかりと新課程の内容を把握し、適切な指導を行えればこの懸念は解消します。
徹底した周知が必要になりそうです。

国公立大志望者が減るのではないか…

もうひとつ懸念される事項が「国公立大志望者の減少」です。
特に、国公立文系志望者が減少するのではないか、というものです。


というのも、2025年共通テストでは以下の動きがあるからです。

・数学②は数学Ⅱ・B・Cのみ選択。B・Cは4項目中3項目を選択して回答。
・「情報」の出題。


数学②は数学Ⅱ・B・Cのみ選択。B・Cは4項目中3項目を選択して回答。

共通テストには「数学①」と「数学②」があります。
従来であれば、以下のような選択ができました。

・数学①:「数学Ⅰ」または「数学Ⅰ・A」のどちらかを選択
・数学②:「数学Ⅱ」または「数学Ⅱ・B」のどちらかを選択



しかし、2025年共通テストからは数学②が変わります!(※数学①は引き続き同様な形)
数学②は「数学Ⅱ・B・C」しか選ぶことが出来ません
「数学Ⅱ」だけ、「数学Ⅱ・B」だけ、というのが出来なくなるわけです。


また、数学B・Cでは以下の4項目の出題の内3項目を選択する必要が出てきます。

数学B:数列・統計的な推測
数学C:ベクトル・平面上の曲線と複素数平面



つまり、文系理系問わず数学Cを学習している必要があるのです!
これは理系ならまだしも、文系受験生には大変な負担がかかることになるでしょう。
もちろん理系でも「統計的な推測」自体が単元として増えていますから、負担にはなるでしょう。

「情報」の出題。

2025年共通テストでは「情報」も必修化されます。
「未来投資戦略2018─ 「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革─」では以下のように述べられています。

義務教育終了段階での高い理数能力を、文系・理系を問わず、大学入学移行も伸ばしていけるよう、大学入学共通テストにおいて、国語、数学、英語のような基礎的な科目として必履修科目「情報Ⅰ」(コンピュータの仕組み、プログラミング等)を追加するとともに、文系も含めて全ての大学生が一般教養として数理・データサイエンスを履修できるよう、標準的なカリキュラムや教材の作成・普及を進める。

未来投資戦略2018─ 「Society 5.0」「データ駆動型社会」への変革─


やはり、文系であっても高い「理数能力」が求められるのがこれからの社会です。
私個人としてはこの流れは大いに賛成です。
しかし、「情報」が共通テストで必須になることにより、国公立受験者の負担が今以上に増えることには首肯しかねる点もあります。なかなか難しい問題です。

早めの対策を

今回は新課程数学の主な変更点についてみていきました。
高校生はもちろん、指導する側も早め早めの対策をする必要があります。
「統計」に重きを置いた課程となることを意識しましょう。


まずはしっかりと情報を入手すること
これが何より肝心です。
自分で一次情報をチェックしにいくなどの行動を起こしてみてくださいね。


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